大妻多摩中学高等学校

【教員つれづれ草】第250段

 高校生の時、授業中に内職をしてしまったことがあった。その時、夢中になって読んでいた夏目漱石の『こころ』を隠れて読んでいたのである。もちろん先生に見つかってしまい、「やばい怒られる!」と思った瞬間、先生はニコニコ笑いながら、私が持っていた本を奪い取り、

 「『こころ』か、今どの場面読んでんねん……」 と確認をし、なんとその後、10分間その場面から最後まで、いかに面白いかストーリーをみんなに語り聞かせたのである。私に対する見事な制裁である。特に怒ることもなく、けっきょく私は、その後の楽しみを奪われた形となった。

 ウィットに富んだ対応! また、それを可能とする教養。それでいてしっかり懲らしめる。こんなことをやってのける教員になりたいと思いつつも、まず怒って注意してしまう自分の底の浅さを嘆くばかりだ。

 ちなみに、この先生は世界史の担当だった。私は関西人である。

井の中の高野聖