大妻多摩中学高等学校

【校長室より】「スター誕生」―― 栄光と挫折

「スター誕生」―― 栄光と挫折

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ブラッドリー・クーパー監督・脚本・製作・出演、レディ・ガガ主演による『アリー/スター誕生』が第61回グラミー賞にノミネートされ、ガガが歌った「シャロウ」が年間最優秀楽曲賞・最優秀賞など4部門にノミネートされたといいます。この作品は1937年に公開されたデイヴィッド・O・セズニック製作による『スタア誕生』の4回目のリメイク版。1954年にジョージ・キューカー監督、ジュディ・ガーランド主演で2回目の、1976年にバーバラ・ストライサンドの製作総指揮・主演により3回目のリメイク版が作られています。映画のリメイク版はオリジナルの作品をしのぐかどうかが問題で、たいていの場合、二度、三度とリメイクされるにつれてそのクオリティが問われるのが常ですが、『スター誕生』では、いずれの作品ともアカデミー賞作品賞や主演男優・女優賞、楽曲賞などノミネート・受賞しているなど、ハリウッドの歴史上名を残す優れた作品になりました。

37年版、54年版では映画界の、76年版では音楽界を背景に作られたこの映画は、無名の女性が有名スターに見いだされて栄光の地位を獲得するが、彼女の人気とは反対に、彼女の才能を見出した男性は酒に溺れて身を持ち崩していくというストーリー。この度のブラッドリー・クーパーとレディ・ガガ主演による『スター誕生』では、昼間はウェイトレスとして働き、夜はクラブで歌うレディ・ガガ演じるアリーが、たまたま鼻歌程度に口ずさんだ歌が、次の場面ではクーパー演じるウェスタン歌手ジャックが出演する野外フェスでバンド演奏されるのです。スーパースターであるジャックに呼ばれ、無理やり出演させられた素人同然のアリーがジャックとデュエットすると大喝采が浴びせられ、アリーはあれよあれよという間にスターに押し上げられます。プロの音楽家によれば、口ずさんだ歌の断片を野外フェスで演奏するということはあり得ないのだそうで、そこのところは映画のなせる業、主役を演じるクーパーとガガの歌唱力によるものなのです。この曲がテーマ曲ともなっている「シャロウ」です。

 

Tell me somethin’ girl

Are you happy in this modern world?

Or do you need more,

Is there somethin’ else

You’re searching for?

教えてくれ

今の世界でハッピーかい?

もっとハッピーになりたいかい?

探しているものが

あるはずだ

あの独特のファッションとヘアスタイルのレディ・ガガはほとんど化粧もせず、Tシャツにジーンズというシンプルな服装。一方監督とガガの相手役を務めるクーパーは、難聴とアルコール中毒を患い、さらにドラッグに溺れて歌手としての生命も危ぶまれるジャックを好演しています。この映画のすばらしさは歌手であるガガの演技と、監督であるクーパーの歌唱力と演技力によるものでしょう。

アメリカ演劇や映画によくあるように、この映画でもジャックと彼のマネージャーを務める兄ボビーとの葛藤、アリーと父ロレンツォというおそらくガガと同じイタリア系の父娘の絆というように、家族関係がそのストーリー展開に大きな影響を与えているところが面白い。前作のジュディ・ガーランドもバーバラ・ストライサンドも押しも押されぬ大ミュージカルスターになりましたが、『スター誕生』の主役を演じることによって、ガガもまた映画界・音楽界の地位を不動なものにしたといえるでしょう。