大妻多摩中学高等学校

【校長室より】『スパイダーマン』の生みの親

スタン・リー ――『スパイダーマン』の生みの親

スタン・リー スパイダーマンとバラクオバマ
オバマとスパイディ

CBSニュースは11月12日、マーベル・コミックスの原作者であり編集者でもあるスタン・リー(Stan Lee)の死を伝えました。95歳でした。彼は1961年に『ファンタスティック・フォー』、62年に『スパイダーマン』、そして『ハルク』、『デアデビル』、『X-MEN』、『ドクター・ストレンジ』など次々とスーパーヒーローを生み出して、マーベル・コミックスをDCコミックスに次ぐコミックスの出版社にしました。彼は、DCコミックスの「スーパーマン」や「バットマン」など、完全無欠の成人の姿をしたスーパーヒーローとは異なる新しいヒーローを生み出して読者の共感を呼び、アメリカンコミックス全体の人気を上げたことでも貢献しました。

リーは『スパイダーマン』を考えついたときのことをこのように言っています。「一匹のハエが壁にとまっているのを見たとき、もし人間が昆虫のように壁を這って歩くことができたら面白いんじゃないか?Insect-Man? いや違う。Mosquito-Man? いや、これも違う。Spider-Man? そうだ、これならドラマチックだ。彼はクモのような力を持って、クモの糸を出して、これを使って飛び回ることが出来たら!主人公は高校生にしよう。そして彼に人間的な欠点を持たせることにしよう」このアイデアは当時の編集者に即刻却下されましたが、この「スパイダーマン」こそがマーベル革命を起こしたのでした。

『スパイダーマン』の主人公ピーター・パーカーには両親はおらず、ニューヨークのクイーンズにある叔父夫婦の家から高校に通っています。服装もぱっとせず、同級生からからかわれ、女の子にもてない。あるとき学校の授業で博物館を訪れたときに、遺伝子組み換えのクモに刺されて特殊能力を持つようになったことから「スパイダーマン」が誕生します。超能力を持つに至って彼は自らの責任を思い知ることとなり、その責任ゆえに社会の悪を倒すスーパーヒーローとなるのです。性格的にも弱点のある普通の高校生が一夜にしてスーパーパワーを持つようになるが、彼の精神的な欠陥がときには大胆な行動を阻み苦悩するといった設定が、自己を見失いがちになる60年代の同世代の若者に受けたのでしょう。かつてのスーパーヒーローたちの活躍の場がニューヨークの摩天楼だったとすれば、「スパイダーマン」ほどこの摩天楼が似合うヒーローはいません。彼はスパイダースーツに身を包み、手首から発せられるクモの糸を自由自在にあやつってビルからビルへ飛び移ります。

“The characters would be the kind of characters I could personally relate to; they’d be flesh and blood, they’d have their faults and foibles, they’d be fallible and feisty and – most important of all – inside their colorful, costumed booties they’d still have feet of clay.”

「登場人物は私の個人的な知り合いの人たちみたいなんだ。彼らには肉もあれば血も通っているし、欠点や弱点もある。彼らは間違いも犯すし喧嘩もする。でも何より重要なことは、派手なブーツの中の彼らの足はもろい土器みたいに傷つきやすいということなんだ」

1972年にマーベル・コミックスの社長に就任するまで、リーは原作者・編集者として活躍し、70年代以降は多民族国家アメリカを反映するように、黒人や女性のスーパーヒーローを生み出しました。アメコミは世界の動向にもいち早く反応してストーリーに取り込んでいますが、スーパーヒーローたちの立ち位置は政治にも影響を与えているのです。例えば2009年のオバマの大統領就任1週間前に発売されたコミック(“Spidy Meets the President”)では、就任式を妨害しようとする悪役のカメレオンを、新聞社のカメラマンをしているピーター・パーカーすなわちスパイダーマンが倒すというストーリーです。この号からもアメコミ界が明らかに民主党支持だということがわかりますが、一方ドナルド・トランプは2016年に発売された雑誌ですでに悪役(villan)として扱われていることから、その嫌われぶりが明らかです。

32ページのオールカラーの雑誌からアニメーションになり、最近ではスーパーヒーローものは実写映画として莫大な興行成績をあげています。1989年の『インクレディブル・ハルク』以来、リーは映画化作品にはいつもカメオ出演することで有名です。リーの死によって、アメコミの全盛期は終わったと考えるメディアやファンも多いと思いますが、彼の遺したスーパーヒーローたちは永遠に生き続け、これからも彼とともに仮想敵からアメリカを守っていくに違いありません。