大妻多摩中学高等学校

【校長室より】食品ロス問題とフードバンク活動

食品ロス問題と、フードバンク活動

20180625校長室より_NPO法人シェアマインド①

OCⅡの授業の一環として、多摩市NPO法人シェア・マインド代表理事の松本靖子さんの講演を伺う機会がありました。松本さんは、家庭や企業で余った食品を預かり、「無料スーパー」を開いて食べ物を必要としている人たちに提供したり、預かった食材を調理して大人300円、子ども100円で食べられる「あさめし食堂」を運営している方です。講演では、なぜ食品ロスは重大な問題なのか、さらに「フードバンク」について、どんなところでなぜ食品が余るのか、どんなところで誰が食品を必要としているのかなど、「フードバンク」の仕組みと課題について講演してくださいました。

「フードバンク」とは1960年代にアメリカから始まった、食品メーカーなどで余った食品を無償でゆずりうけて生活困窮者に配布するNPO、NGO団体が運営する活動のことです。これらの食品は賞味期限は十分残っているものの包装の不備などで市場には出せず、これまでは廃棄せざるを得なかったものです。この運動は80年代に世界中に広がりましたが、食べ物を粗末にしない、「もったいない」の精神から、日本でもここ10年ぐらい全国的に広がりつつあります。

昨年私がHPで紹介した映画『わたしは、ダニエル・ブレイク』は、映画界から引退を表明していたケン・ローチ監督が、現代のイギリスで問題になっている貧困と格差社会について掘り下げ、第69回カンヌ国際映画祭で2度目のパルムドールを受賞した話題作です。映画では生活保護を受けている大工のダニエルを主役に、彼の前に立ちはだかる行政のあまりにも理不尽な仕組みと、彼と同じく貧困に苦しむ労働者階級の人々の生活を描いています。ダニエルは二人の子どもを連れたシングルマザーのケイティと出会いますが、所持金が底をついたとき、彼女はなりふり構わず地元のフードバンクを訪れ、空腹のあまり缶詰の中身を皿に移す余裕もないまま、缶から直接食べるシーンが印象的でした。

2015年オーストリアで制作された映画『0円キッチン』(英題Wastecooking、残り物料理の意味)は、本来なら捨てられる食材を使って人々を幸せにするおいしい料理を作ろうと、植物廃油で走るキッチンカーでヨーロッパ5か国の旅に出かける「食材救済人」ダーヴィドによるロードムービー。世界中で生産される食糧の3分の1は廃棄され、その量は世界で毎年13億トンに達するといいます。一方で食品は余り、その一方で毎日の食事すら口にできない貧困にあえぐ人々がいる。ダーヴィドは5000キロ以上を走行しながら売り物にならない食材を提供してもらって調理をし、富の不均衡と消費社会の矛盾を訴える活動家たちともネットワークを広げていきます。

そういえば、この『0円キッチン』は日テレの『ザ!鉄腕!DASH!』の「ゼロ円食堂」と同じコンセプトですよね。TOKIOのメンバーが農家や港を回っては市場には出まわらない、十分食べられるが捨てられる野菜や魚、または製麺工場などで廃棄される麺の切りくずなどを集めて調理し、提供してくれた人たちに食べてもらうという企画です。この企画の背景には廃棄される食べ物の有効活用というフードバンクの考え方があったのですね。

『ダニエル・ブレイク』では社会の最下層で生活している人々が、生きる尊厳を捨ててまでも食料をもとめて最後の手段として訪れる場所がフードバンクというように描かれていますが、松本さんが主宰する多摩市のシェア・マインドは、家庭や企業の食品ロスをなくして、集めた食材をひとり親家庭や求職中の人、病気やけがで買い物に行けない人など、食品が必要な人々に提供しようという試みです。『ダニエル・ブレイク』ほど深刻でないにせよ、その背景には、近年の日本における貧困問題、給食費が払えない家庭、そして子ども食堂の存在が見え隠れします。

みなさんもお近くにフードバンクがあったら、ご家庭で余っている食品を届けて活動に参加してみてはいかがでしょうか。

20180625校長室より_NPO法人シェアマインド②