大妻多摩中学高等学校

【校長室より】実写版アニメーション『ピーター・ラビット』(2018)

実写版アニメーション『ピーター・ラビット』(2018)

20180611校長室より_ピーターラビット③

なんとも楽しい映画が製作されたものです。テレビで予告編が放映されていたので、すでに映画館でご覧になった方もあると思いますが、「実写版アニメーション」と書いたのには訳があります。今まで「ピーター・ラビット」はアニメーションになったり、作者ビアトリクス・ポターの生涯が映画になったりしましたが(『ミス・ポター』2006)、今回の現代版『ピーター・ラビット』では、CGで描かれたほんものそっくりの動物たちが人間の登場人物と一緒に演技をするのです。主役となるピーターはじめ彼の妹たち(三つ子の女の子という設定)と従兄弟のベンジャミンはウサ耳の血管まで透けて見えるようですし、毛皮のモフモフ具合も手に取るようにわかります。人間のように二足歩行するかと思えばぴょんぴょんとウサギ跳びをして草地を走りまわり、そのほかの動物たちも動きはほんものそっくり。その表情といったらかわいいけど憎たらしい。彼らは人間と同じように満面で喜怒哀楽を表わします。

20180611校長室より_ピーターラビット④
原画:「ピーター・ラビット」シリーズ

英国の湖水地方を舞台に、ピーターと動物たちを主人公として、その脇筋としてのビア(ビアトリクス・ポター?)とマグレガーさんの甥とのロマンチックストーリーだと思って観に行った方は、その展開に度肝を抜かれるでしょう。湖水地方の風景とそこに住む動物たちをこよなく愛する画家ビアは、素人目にもうまいのか下手なのかわからないような絵を描くかたわら、服を着た動物たちのイラストを描いています。 ピーターの父親を捕まえてパイにした隣家のマグレガーさんが心臓発作で急死した後、彼の家を相続したのが甥のトーマス・マグレガー。ロンドンの高級デパート「ハロッズ」を解雇された後やむなく湖水地方にやってきますが、都会育ちの彼は大の動物嫌いで潔癖症。

夫亡き後の子どもたちを守っていた母も他界し、すっかり大人に成長したピーターは妹たちと仲良く助け合いながら巣穴で暮らしています。でもピーターとベンジャミンの悪ガキぶりは成長しても変わらず、子どものころよりさらにパワーアップしています。ピーターをリーダーとする動物たちとトーマスの戦いでは、最初はパチンコでトマトなどをぶつけていたのが次第にエスカレートし、トーマスの仕掛けた電気フェンスと爆薬をピーターたちが細工して逆にトーマスを襲撃するなど、アクション映画さながらの死闘が繰り広げられます。それもこれも、ピーターのビアに対する母親とも恋人ともつかないような思慕の気持ちが、ビアに好意を抱くトーマスへの敵対心にさらなる火をつけることになるのです。

ピーターのあのブルーの上着はお父さんの形見だったのですね。従兄弟のベンジャミンは茶色のたれ耳ウサギですが、毛と同じ茶色のシャツを着ていることでロンドンのネズミに「田舎者」とからかわれます。どの動物も上着しか着ていませんが、“No pants, no problem”(「パンツをはかなくても大丈夫!」)は今回の映画のキャッチフレーズらしい。(パンツはズボンのことですよ!)最初ポターが出版社からクレームをつけられた「洋服を着た動物」はこの映画で絵本どおりに再現されています。「フレデリック・ウォーン社」(注)と「ハロッズ」の全面協力のもとに製作されたこの映画の総監督は、2015年公開の『ANNIE/ アニー』のロブ・ライバー。『トゥームレイダー』や『インクレディブル・ハルク』などの監督ピーター・メンジースJr.をはじめ、特殊効果チームと視覚効果チームが激しい戦いの場面を再現したといいます。

今英国はハリー王子とメーガン・マークルさんの結婚式のニュースでわいていることと思いますが、『ピーター・ラビット』が3月に公開されたロンドンでは4週にわたって第一位にランクインしたといいます。詳しいストーリー展開と結末はここでは書かないでおきましょう。人間と動物の共生とか自然回帰などという理屈を言う前に、素直な気持ちで動物たちの生き生きとした生活ぶりを見れば、子どもも大人もみんなが元気になるはずです。

(注)フレデリック・ウォーン社
1865年に設立された英国の出版社。1983年ペンギンブックスに吸収合併されますが、「ピーター・ラビット」シリーズの出版元だったことを尊重して、彼女の関連本にはウォーン社とペンギンの両方の名前が記されています。現在も本の出版とぬいぐるみや食器などのグッズ販売はウォーン社が引き受けています。かつてポターは両親の反対にもかかわらず創業者の三男であるノーマン・ウォーンと秘密裏に婚約しますが、彼は一か月後に白血病で亡くなってしまいます。