大妻多摩中学高等学校

【校長室より】話題の本の紹介① 新井紀子著『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』

話題の本の紹介① 新井紀子著『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』

20180416校長室より_おすすめ本①

今週と来週、なかなかご紹介する暇のなかったベストセラー2冊をご紹介したいと思います。
一冊目は国立情報学研究所教授で同社会共有知研究センター長の新井紀子氏による『AI vs.教科書が読めない子どもたち』です。

「AIが神になる?」-なりません!「AIが人類を滅ぼす?」-滅ぼしません!「シンギュラリティが到来する?」-到来しません!(シンギュラリティとは技術的特異点、すなわち、「真の意味でのAI」が、自律的に、自分自身よりも能力の高い「真の意味でのAI」を作り出すことができるようになった地点のこと)

MARCHレベルの私大までは合格可能になったが東京大学には合格できるレベルには達しなかった「東ロボくん」の生みの親にして育ての親の新井紀子氏による本書は、帯からしてセンセーショナル。AIについての様々な情報が飛び交う中、その中心にいる数理論理学者である新井氏が「シンギュラリティは来ないし、AIが人間の仕事をすべて奪ってしまうような未来は来ませんが、人間の仕事の多くがAIに代替される社会はすぐそこに迫っています」と断言します。

新井氏は、「東ロボくん」は7年間の開発によって、AIは英単語や世界史の年表を覚えたり正確に計算することなど、人間の力では処理しきれないような膨大な量の情報を処理することはあっという間にできるが、教科書に書いてあることの意味を理解することは苦手で、それでも成長し続け、センター模試では平均得点を上回り偏差値も上昇したといいます。AIが教科書に書いてあることの意味を理解できないという事実は、日本の中高生の読解力にもあてはまると考えた新井氏は、数学の点数が悪いのは問題文を理解していない(理解できない)からと考え、「大学生数学基本調査」を行った結果、学生には基本的な読解力に決定的な問題があることに気づくのです。教育分野では「教員による一方向的な講義形式の教育とは異なり、学修者の能動的な学修への参加を取り入れた教授・学習法の総称」であるアクティブ・ラーニングが盛んに行われていますが、教科書に書いてあることを理解できない学生がどうしたら自ら調べることができるか、自分の考えを論理的に説明したり、相手の意見を正確に理解したり、推論したりできない学生が、どうすれば友人と議論することができるか、と新井氏は疑問を呈します。

AIの出現によって、今まで人間がしてきた仕事の大半が代替えされる時代が来ても、また新たな仕事が生まれて人間の仕事は減らないかもしれない、というのは甘い幻想のようです。新しい産業が生まれて、新しい仕事が出現しても、その仕事は人間しかできない仕事でなくてはなりません。AIによって仕事を失った人のうち、「人間にしかできないタイプの知的労働に従事する能力を備えている人は、全体の20%に満たない可能性があ」り、AIに対して優位に立てる読解力を身につけていなければ多くの失業者があふれることになる、と新井氏は警告しています。読解力を身につけ、人間にしかできないことを考えて実行に移すこと、これが現代人が生き延びる道だと新井氏は言います。多くの中高生が数学が苦手なのは、実は中学の教科書の文章を正確に理解できていなかった、このままほっておくと、多くの仕事がAIに取って代わられたとき、読解力がない人は失業するしかない、という衝撃的な内容に教育関係者でなくてもぞっとするはずです。